新型コロナウイルスの影響によって、家計のやりくりに困窮している人々が増えています。そういった人たちにとって事実上「給料を前借りできるシステム」である給料ファクタリングは魅力的に感じるでしょう。
しかし、給料ファクタリング業者は数あれど、中には違法な業者も存在していますし、最近では給料ファクタリングに対する金融庁と裁判所による見解が発表されました。
給料ファクタリングの利用を考えているのであれば、金融庁と裁判所がどの様な見解を示しているのか理解しておきましょう。
給料ファクタリングとは具体的にどのようなサービスなのか
金融庁と裁判所の見解の前に、そもそも給料ファクタリングとはどの様なサービスであるのか軽く説明します。
給料ファクタリングの仕組みについて
給料ファクタリングは、利用者が勤務先の会社に対して有する将来の給与債権を給料ファクタリング業者が買い取るという、債権譲渡という仕組みです。
債権譲渡の際、給料ファクタリング業者から利用者に対して債権譲渡の代金が支払われ、給料の額面から手数料を控除した金額に設定されるので、手数料相当額が給料ファクタリング業者の利益となります。
その後、利用者が給料を貰ったら、その全額を給料ファクタリング業者に支払うという流れになっています。
このように、給料ファクタリングは利用者が手数料の支払いと引き換えに、事実上給料の前借りができるというものです。
給料ファクタリングは2社間ファクタリングに該当
ファクタリングには「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。
2社間ファクタリングとは、ファクタリング業者と利用者の間のみでファクタリング契約を締結する一方、譲渡される債権の債務者(職場)はファクタリングに関与しない流れです。
2社間ファクタリングでは必然的に、譲渡される債権の支払いは債務者(職場)から利用者に対して行われ、その後利用者が給料ファクタリング業者に対する支払いを行うという流れになります。
3社間ファクタリングとは、ファクタリング業者・利用者・譲渡される債権の債務者(職場)の3者間でファクタリング契約を締結する流れです。
ファクタリング業者にとっては、利用者を経由しないのでリスクが減り、手数料が安く設定される傾向があります。
しかし、給料ファクタリングにおいては3社間ファクタリングを行うことは法律上認められていません。
労働基準法24条1項では、会社は労働者に対して直接賃金を支払わなければならないとされています。
したがって、給料ファクタリングは2社間ファクタリングの形態のみが認められているということになります。
給料ファクタリングは貸金業?
給料ファクタリングの仕組みについて分かったところで、本題である給料ファクタリングは貸金業でないということがわかると思います。
しかし、なぜ貸金業と言われてしまうのかには以下の様な理由があります。
お金の流れが労働者へ支払い請求になっているため
給料ファクタリングは給料債権の買取を名目に運営しています。しかし、実際には職場ではなく、利用者本人が給料ファクタリング会社へ支払いをする必要があります。
そのため、給料ファクタリング業者が利用者にお金を振込み、勤務先が利用者に給料を支払い、利用者やが給料ファクタリング業者に給料から返済というお金の流れになっています。
この流れが利用者にお金を貸し付けているのと同等と判断されてしまうためです。
年利が闇金並みの暴利だから
他にも、給料ファクタリングの手数料を年利として換算すると闇金並みの暴利であるという点も挙げられます。
給料ファクタリングの手数料の相場は20%~40%で、利用者は会社から給料が支払われたときに支払いをします。そのため月間利息は20%~40%となるわけです。
これを年利に換算すると、
20%~30% × 12ヵ月 = 240%~480%
という暴利となります。
この様に給料ファクタリングの手数料を年利で換算すると、法定金利を大幅に上回る闇金の様になってしますという点が問題視されています。
金融庁「ビジネススキームが貸金業に該当」
それでは実際に、金融庁の見解。東京地方裁判所の裁判例をみてみましょう。
金融庁の見解について
金融庁は給料ファクタリングが貸金業に該当する根拠として、「個人(労働者)が会社(使用者)に対して有する給料(賃金債権)をファクタリング業者が買い取って金銭を交付し、個人に対して回収を行うものである」とするビジネススキームを例に挙げた。
業者が労働者に対し支払を求めることになり、「スキーム上、(ファクタリング業者から労働者へ)金銭の交付だけでなく、労働者からの資金の回収を含めた仕組みが構築されていると判断できる。これは金銭の交付と返還の約束が行われている貸付と同様の機能を有しているものと考えられる」ことから、貸金業法第2条第1項に定められている「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」にあたると判断しています。
東京地方裁判所の裁判例
2020年3月、東京地裁が2件の給料ファクタリングに関する訴訟について相次いで判決を下しました。
東京地裁も金融庁と同様、給料ファクタリングが貸付けと同様の機能を有することを理由として、貸金業に該当すると判断しました。
今後上級審や他の裁判所で異なる規範に基づく判決が下される可能性は残っていますが、東京地裁の2つの判決は給料ファクタリングの貸金業該当性について明示的に判示した大きな意義を持つ先例として、重要な意味を持つでしょう。
コロナ禍による利用者が増え、給与ファクタリングが規制される可能性がある
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、仕事が減り収入が減ってしまったという人が増えてきています。
この新型コロナウイルスの影響は給料ファクタリングの利用者増加にも関係があります。
新型コロナで生活困窮者が増えている
新型コロナウイルスの影響で経済が急速に悪化しており、今すぐ現金がなければ生活ができなくなってしますという生活困窮者も増えています。
そんな中、給料ファクタリングの様な最短で即日で現金を手に入れることができるのは非常に魅力的に映るでしょう。そのため、目先のことだけを考えて給料ファクタリングを利用する人も増えます。
給料ファクタリングの手数料は高いため支払いの際に苦しんでしまう可能性もあるので利用する際はその点もしっかりと理解して利用をしなければなりません。
メリットもありますが、デメリットもある給料ファクタリング。利用者が増えたことにより給料ファクタリングが規制される可能性も高まります。
まとめ
金融庁は給料ファクタリングは貸金業に該当するとの見解を示していることがわかりました。
その上、コロナウイルスの影響もあり利用者が増えたことで今後規制される可能性が大いにあるということを理解しておきましょう。
現状給料ファクタリング関連の法整備は整っていないので、利用する際はよく仕組みやリスクも確認する様に注意してください。