給料ファクタリングは給与債権を業者に売却することで現金を入手する手段となっていて注目を集めているサービスです。現状、給料ファクタリングに関連する法整備が整っていないのでグレーゾーンなサービスとも言われています。
そこで金融庁、消費者庁等機関、様々なメディアなどの給料ファクタリングに関する情報、注意喚起などを調査し、まとめたので給料ファクタリングについての情報が気になる方は是非参考にしてみて下さい。
給料ファクタリングに関する各行政機関やその他機関からの注意喚起&お知らせ情報
それでは各行政機関等が発表している給料ファクタリングに関連する注意喚起、お知らせ情報を紹介していきます。
金融庁
金融庁ではクレジットカード現金化や個人間融資などの危険性についての注意喚起を行なっていますが、給料ファクタリングに関しては特に触れていません。
ただ法人向けのファクタリングについては金銭の貸し借りではないため、貸金業の登録は必要ないとしていながらも「ヤミ金の可能性あり」「実際には高金利の貸付に該当する」という見解を述べていました。
【相談事例等】
金融庁:多重債務に関する相談等
ファクタリング業者と名乗る者から、「借金をしないで資金調達が可能」との内容の勧誘文書がファックスで頻繁に送られてくる。これらの勧誘は信用できますか。
【アドバイス等】
近年、「ファクタリング」を装ったヤミ金融が横行しているとの報道等があることから、十分にご注意ください。
「ファクタリング」とは、一般に、企業が取引先に対し有する売掛債権をファクタリング会社が買い取り、買い取った債権の管理・回収を自ら行う金融業務をいいます。
このようなファクタリングの法定性質は、売買契約に基づく指名債権の譲渡であり、金銭の貸し借りではないので、貸金業の登録は必要ありません。
しかしながら、この「ファクタリング」とみせかけて、実際には、高金利で金銭を貸し付けている事例(具体的には、「ファクタリング」と称し、高額な手数料を差し引いて売掛債権の買取代金を支払う(貸し付ける)一方で、当該債権の管理・回収を自ら行わず、同債権の売り主をして売掛債権を回収させた後、回収した売掛金を原資として買取代金を返済させるもの)が発生しています。
ファクタリング契約や売掛債権売買契約において、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の売り主が譲受人から売掛債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合は、ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性が高いことから、相手方業者の貸金業登録の有無を確認のうえ、手数料(又は債権額と買取額の差)が年率換算で事実上の高金利になっていないか、十分にご注意ください。
消費者庁
消費者庁では給料ファクタリングに関する相談事も受け付けているようですが、特に注意喚起は行っておらず、法人向けのファクタリングにのみ注意喚起をしていました。
【注意喚起】
消費者庁のTwitter
中小企業の経営者を狙い、売掛債権等を売却して資金を調達する「ファクタリング」を装って、貸金業登録のない業者が違法な貸付けを行っている事案が確認されており、金融庁で注意喚起をしています。
日本貸金業協会
貸金業に関する問題を解決したり自主的規制を行う団体が日本貸金業協会です。
現時点では給料ファクタリングに関しての注意喚起など出していません。法人向けのファクタリングについては、注意喚起を行なっています。
中小企業の経営者を狙い、売掛債権を売却して資金を調達する「ファクタリング」を装って、無登録業者が債権を担保とした違法な貸付けを行っている事案が確認されています。
日本貸金業協会「注意喚起」
国民生活センター
国民生活の安定および向上に寄与するため、国民生活に関する情報の提供及び調査・研究などを行う国民生活センターでは、現時点で給料ファクタリングに関する注意喚起は行なっていません。
ヤミ金被害の相談等は受け付けている様です。
日本ファクタリング業協会
法人向けファクタリングの自主規制などを行う目的で設立された団体の日本ファクタリング業教会では、給料ファクタリングに関して違法という見方を出しています。
給料ファクタリング業者でのトラブル解決の弁護士紹介なども行なっています。
給与ファクタリングにおけるグレーゾーン
給与ファクタリングは法整備がされておらず、グレーゾーンと言われています。そのグレーゾーンと言われる由縁として以下の金融庁ののンアクションレター(法令適用事前確認手続)があります。
金融庁のノンアクションレター(法令適用事前確認手続)
金融庁に送られたノンアクションレターは以下になります。
1.法律照会の対象となる法律と具体的な論点
⑴対象法令:貸金業法
⑵論点 :給料ファクタリングは貸金業に該当するか
2.ノンアクションレターの見解とその根拠
⑴貸金業法の規定
貸金業法では、金銭の貸付をお金の交付と返還の約束・契約と定義している。
また手形割引や売渡担保なども、実質的にはお金の交付&返還であるため貸付と同じである。
⑵給与債権の譲渡について
給与債権は、労働基準法にて「雇用者は労働者に通貨で直接支払う必要がある」と決められている。過去には、労働者が給与債権を他人に譲渡した場合でも、雇用者は労働者に直接、給与を支払う必要があるという判例が出されている。
⑶見解
ファクタリング会社は利用者の勤め先の会社に支払いを請求することはできないため、利用者に請求を行っている。
そのため給料ファクタリングは直接的なお金の貸し借りではないが、
・ファクタリング会社から利用者にお金を交付
・利用者はファクタリング会社にお金を返還
というシステムが成り立っている。
したがって給料ファクタリングは貸金業法に該当すると考えられる。
金融庁のノンアクションレター(法令適用事前確認手続)に対する回答
本回答書はあくまでも現時点での、法令に関する一般的な解釈です。
個別的な事案に対して合法か違法かを示すものではありません。
またこの回答書を元に、捜査機関の判断や罰則の適用を行うことはありません。
回答
労働者が雇用者から支払いを受ける前に、給料をファクタリングした場合でも雇用者は労働者に直接、給料を支払う必要がある。
そのため給料ファクタリング業者は雇用者に対して支払いを請求することはできない、また業者からの請求は利用者に対して行うこととなる。
そのため給料ファクタリングにおいては、
・給料ファクタリング業者から利用者へお金を払う
・利用者が給料ファクタリング業者に返済をする
というシステムが構築されていると判断でき、経済的に貸付を行っていると考えられる。
したがって給料ファクタリングは「貸金業」に該当すると言うことができる。
給料ファクタリングに関する注目のニュース一覧
続いてこれまでに、メディア等で取り上げられた給料ファクタリングに関するニュースをご紹介します。
朝日新聞
2020年の2月に朝日新聞が給料ファクタリングをヤミ金の再来として注意喚起を行なっています。
給料の前払いをうたい文句に事実上、現金を貸し付ける悪質な業者が横行している。法外な支払いを請求されて困った利用者の訴えが昨年以降、目立ち始めた。業者は企業向けの資金調達手法になぞらえて「給料ファクタリング」と称しているが、実態はヤミ金だとの指摘もあり、業者と利用者のトラブルが裁判に発展する例も出てきた。
朝日新聞デジタル「給料ファクタリング「ヤミ金の再来」 被害急増、裁判も」
仕組みはこうだ。利用者は一定額の給料を受け取る権利(債権)を給料日前に額面より安く業者に売り、現金を入手。給料の受け取り後、額面通りの現金を支払って債権を買い戻す。実質的には、安くした分を利子にして業者から金を借りているのと同じ構図だ。差額は業者の利益となり、年利換算で1千%近くに及ぶケースもあるという。
業者側は給料ファクタリングは貸金ではなく債権の売買だと主張するが、この問題に詳しい山川幸生弁護士(東京弁護士会)は「ヤミ金の再来だ」と話す。ヤミ金への規制が厳しくなり、抜け道としてファクタリングに目をつけた可能性があると指摘する。貸金だとすれば貸金業法や出資法などに抵触するといい、「まずは金融庁がはっきりと見解を示してほしい」と話す。(新屋絵理)
こちらの記事では給料ファクタリング業者と利用者の裁判事例を取り上げています。
日経新聞
給与を事実上の担保として資金を提供し、手数料を要求する「給料ファクタリング」の被害相談が相次いでいる。”融資”を持ちかけるSNS(交流サイト)投稿などを見て給料の前借り感覚で利用するケースが目立つ。金銭の貸し借りではないため利息制限はないが、金利換算では法外な手数料がかかるケースも多く、弁護士などが注意を呼びかけている。
日経新聞「給料ファクタリングご用心 狙われる「前借り感覚」」
消費者金融に詳しい小林孝志弁護士によると、ファクタリングは中小企業などが売掛債権を売却し、当座の資金を調達する手法。これを個人の賃金に当てはめたのが給料ファクタリングだ。現金がすぐに振り込まれるが、高額な手数料を請求される事例が多い。小林弁護士は「金利と異なり、手数料は法律で規制されていない。法の抜け穴をついた悪質な行為だ」と訴える。
(中略)
同協会の吉野利夫代表理事は「これまでは中小企業が持つ取引先への売掛債権を狙った悪質業者が目立っていたが、企業向けより少額のため回収しやすく、トラブルになっても弁護士や警察が対応に消極的な点に目をつけたようだ」とみる。
そもそも労働基準法は給与について原則直接支払いと定めており、債権譲渡された第三者への支払いを禁じている。雇用契約時の書面で給与債権の譲渡禁止を明記する会社もある。ただ、業者の大半は給与を支払う会社側に取り立てることはなく、給与を譲渡した事実が表に出ない例が多い。
仮にファクタリング業者への給与の譲渡が明らかになれば労基法違反に問われるのは会社側だ。また契約上は金銭の貸し借りに当たらないため貸金業法や利息制限法、出資法にも抵触しない。
日経新聞では給料ファクタリングを違法とは断定していませんが、そ利用者に対して注意喚起を促しています。
産経新聞
産経新聞では、2020年3月に給料ファクタリングがニュースとして取り上げています。
会社員などから将来受け取る給料を債権として買い取り、給料日前に事実上、現金を貸し付ける「給料ファクタリング」の被害相談が相次いでいる。
産経新聞「前借り感覚」実態はヤミ金、年利500%も…被害急増
(中略)
法規制がないことを背景に、多額の手数料を要求されるトラブルも目立つ。専門家は「実質的なヤミ金だが、周囲に被害を相談できない人も多い」としている。(杉侑里香)
(中略)
その実態について「ヤミ金にほかならない」と指摘するのは植田勝博弁護士だ。一般的なファクタリングは、大半が「利用する会社-取引先-業者」の3者間の合意で行われる。これに対し、給料ファクタリングは「利用者-業者」の2者間で進み、給料債権の譲渡も名目だけ。そもそも労働基準法は、給料は労働者への直接払いが原則で、「事実上は利用者と業者間の金銭の貸し借りだ」(植田弁護士)。
(中略)
多重債務者を支援する「大阪クレサラ・貧困被害をなくす会」(大阪いちょうの会)にも今年に入り、相談が急増。同会ヤミ金対策委員長の前田勝範司法書士によると、他の消費者金融などで借金がある多重債務者の利用が多いとみられる一方、全容は今も謎が多い。前田氏は「被害事例を集め、実態把握や刑事告発につなげていきたい」と話している。
NHK解説委員室
NHK解説委員室も給料ファクタリングの解説・注意を促す記事を掲載しました。
【給料の「前借り」サービスとは、どういうものですか?】
NHK解説員室
ネットやSNS、スマホのアプリで、「給料を前借りできます」などと宣伝している、「給料ファクタリング」というサービスです。
(中略)
【でも、おカネを受け取って、給料がでたら支払う。これは借金ではないのですか・・?】
事業者は「違う」と言っているのです。あくまでも、勤め先から「給料を受け取る権利」を買い取る契約をしているので、「おカネの貸し借りではない」と言うのです。
(中略)
もともと、ファクタリングは、中小企業などが、商品などを納入した。その代金をあとで支払ってもらう権利(売掛債権)を売って、早めに代金を回収するというサービスが、一般的です。給料ファクタリングというのは、それを個人向けにした形をとっていますが、取引先にあたる勤め先には何も知らせず、2者の間でのやりとりをしていることが多いというのが、この問題に詳しい弁護士の指摘です。
【なぜ、借金ではないと言っているのですか?】
一方、給料ファクタリング事業者は、自分たちは、おカネを貸しているわけではないので、こうした規制の対象にはならないとしているのです。
【これは本当に合法なのですか?】
この問題に詳しい弁護士などは、給料ファクタリングの多くは「ヤミ金融」の疑いがあると指摘しています。
まとめ
給料ファクタリングに関する各機関の発信している情報、メディアのニュースなどを取り上げてみました。多くの機関、メディアでは給料ファクタリングの注意点や危険性を厳しく訴求していました。
しかし、現時点では給料ファクタリングは違法だと断定するものは1つもありませんでした。
給料ファクタリングのご利用をお考えの方は、上記の点をしっかりと踏まえてからご利用して下さい。